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COFFEE COLORS ロースター&バリスタ

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2013年 02月 21日

第2話 ディードリッヒとの出会い

「どうです?カッコいいでしょう」
どう見ても最近良く見る20代の若者だったが

一見、小柄でやせ気味に見えるが妙に引きしまった筋肉が
スーツを着ていても分かる

後で知るのだかプロのライセンスを持つ元ボクサーらしい

2004年国内最大のコーヒー展示会場
今、思えばあれが全ての始まりだったのかも知れない

声を掛けて来たのはN社のKさん
後々私のエスプレッソの師匠となるが
その時は焙煎機の紹介をされた

ディードリッヒコーヒーロースターIR-3

第一印象は「ずいぶん小さい焙煎機だな」
でも無駄のないフォルム、よく見ればスタイリッシュだ

「取付けまでで、いくら位ですか?」とたずねると
「ザックリ400万弱でしょうか」との答え

何と国産焙煎機なら2台は買える金額だった
たしか綺麗な味のコーヒーだったような記憶が

その時は、うちの会社じゃ無理かと思ったくらいで
特に興味は無かったが・・・


あれからもう3年が過ぎた真冬の仙台郊外の店舗事務所

数日前、あの一件以来、私はとり憑かれるように
プライベートの時間は開店準備の情報収集に熱中した

職場では、いつもと変わりなく粛々と業務にあたるのだが
総務部長、専務、社長と次々に面談の申し出が続く

皆が一応は退職を止めるのだが・・・
私が何を考え何をしようとしているのか探っている様子だ

話の内容が直属の上司から総務部長、専務、社長と
引継がれているのが手を取るように良く分かる

最終面談では社長から
「君がやりたいことを出来る環境を・・・云々」

正直、社長には大きな恩を感じている
数歳年下だが創業者の直系で同世代とは思えないオーラがある

関東で10年営業マンとして走り回っていた私に現場から所属長、管理職
バイヤー、店舗運営と1年刻みで様々な経験とチャンスをくれた

特にここ数年の移動は目まぐるしかったが「よく見ておけ」と
社長からのエールのような気がした

そして何よりコーヒーや紅茶の原産地を訪ねる機会も与えてくれた

お陰で組織の全体像と問題、課題も良く見えてきた
同世代の社長を支え、この企業を大きく飛躍させるのが夢だった

本来であれば心が動くはずなのだが・・・


当時アメリカシアトルから派生した高品質コーヒーは
既にグローバル化し日本にも上陸していたが

最初はインディーズだったロースターもグローバル企業として
成長するにつれモノづくりの本質から離れメジャーロースター
と変わらないチープな感じがした

90年代後半、スタバ、タリーズと相次ぎ日本第一号店を出店
当時、私は期待を込めて視察に行き豆を入手しテイスティングを試みたが

ハッキリ言ってがっかりした

先ず鮮度が悪い、次に豆のキャラクターを無視したダークロースト
そしてコーヒーマシンから抽出されるドリップコーヒーは淹れたてでも

全然美味しくない!

更にエスプレッソは苦みだけが強調されてコーヒーの旨みが感じられず
人工的な香料やシロップでごまかしていた

当時、既にスペシャルティーと言う概念が生まれ育ち始め
シングルオリジンのキャラクターをテイスターのように語る

そんな米国インディーズロースターの中でもコーヒーの本質を
極めようと真摯に取組む人々が注目したのが日本の「1杯おとし」

ペーパー、ネルドリップ、サイフォンとまるでガラパゴス化した
ように進化を遂げたジャポニズムコーヒーである

今で言うサードウエーブ(第3世代コーヒー)になるのだが

当時、私の構想の中には「ワインのようにコーヒーを語る」
そんなイメージが既に固まっていた

クリアーでスムージーな第一印象

爽やかな酸味特性と舌先に残る甘み

いつまでも長く続くアフターテイスト

当時、私が理想としたコーヒーの香味イメージだが

色んな焙煎機の窯の味を試してきたが・・・

そうだ! ディードリッヒ! 綺麗な味のコーヒーだった

忘れかけていた、あのスタイリッシュなフォルムを
改めて思いだしパンフレットをファイルに収めていた

本物のコーヒーを極めるには全てを自分で判断出来る
ポジションを作らなければ出来ないと考えた

90年代後半から温め続けた構想だが核心の部分は
未だ誰にも見せていない

あれから既に10年近い月日が流れコーヒーの新世代
時代の波の訪れを予感した私は

今やらなければと言う焦りを感じていた

だから、社長室に入っても心が動かなかったんだ


第3話 青森への帰郷 に つづく


追伸、この物語はあくまでもフィクションとしてお読みください

あくまでも私のいい加減な記憶だけを書き綴ったものです


by coffeecolors | 2013-02-21 19:09 | コーヒーカラーズ物語


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