人気ブログランキング | 話題のタグを見る

COFFEE COLORS ロースター&バリスタ

ccolors.exblog.jp
ブログトップ
2017年 09月 01日

エチオピアコーヒーの今 その5 コーヒーの品質とは

皆さんはモカの味について、どんな印象をお持ちでしょうか?

私は14歳の頃からコーヒーを淹れるようになり、18歳で高校卒業と同時にコーヒーメーカに勤務しました

そこで毎朝、朝礼後のミーティングで出されるコーヒーが何なのかを当てなきゃならないんですが…

その時まだ時代は1980年代半ばコーヒーの表記や等級は生産国の輸出基準でした

ブラジルサントス#2  コロンビアスプレモ  グアテマラSHB  モカハラー  キリマン etc.

コレが日本に入る最高基準のコーヒーとの説明を受けて今日のコーヒーを当てっこするんです

その頃でもブラジルとモカは結構わかりました

今考えると他のコーヒーは全てウォッシュド(水洗処理)雑味の無い綺麗カップなので微妙な酸味特性やフレーバーの違いの判別が必要だったんです

しかしブラジルとモカはナチュラルで品質や精製にもバラツキはありましたが新入社員の私でも確実な個性を見つけることが出来ました

その時感じたモカのフレーバーとは、よく言えば花のような、焼きたてのパンのような魅力的なフレーバー

でも悪く言えば味噌や醤油のような、ぬか漬けのような、もっと言えば納豆のような…

その後も高額なイエメン産モカマタリやイルガチャフのナチュラルが入手できるようになっても私の印象の中には「発酵臭」

つまりダメージを受けたコーヒーの果肉の異臭を感じてしまうんです

その事を明確に認識できたのが初めて訪れたグアテマラアンティグアのウォッシュドミルでした
エチオピアコーヒーの今 その5 コーヒーの品質とは_a0143042_14453748.jpg
ここで外された果肉の粘液質の混じったカスカラの山の匂い、ギンバエが飛んで集まる独特の発酵臭は正にあの苦手なモカフレーバー

モカファンがこよなく愛し珍重するフレーバーですが、正直に言うと痛んで発酵しかけたチェリーの臭みだと思っていたんです

でも、そんなことを少しでも口にしようものなら大変なことになりそうな空気だったので実は長い間心の中で封印し続けていたんです

その後、数年してから日本に上陸したのが水洗のモカイルガチャフィー、モカの概念を変えるスッキリとクリアーで雑味の無い酸味と甘み

1990年代に入りこのコーヒーは一気に人気を博し新しいモカの香味として日本に定着したんです

その後、ポジティブリストの輸入禁止、ECX制によるトレース問題等を経てイルガチャフィーはコモディティーコーヒーの代表格として定着しました

この時点で私はエチオピア産コーヒーに過度の期待を持つことを止め、人気のアイテムの1つとして割り切って店頭のラインナップに並べていたんです

ある先輩ロースターが言っていた「わがままで想うようにならないが、代えがたい魅力を持つ気難しい女王様」

正にこの言葉通り気を使いストレスのたまるめんどくさい豆でした

浅野さんが初めてご来店された時も、私はイルガチャフィーをお出しして心の中でエチオピアってこんな感じでしょう?

小さく心の中でつぶやいていたんですが、彼と話をするうちに少しずつ手ごたえを感じた私はついに禁断の言葉

「エチオピアのチェリーって腐ってますよね」思い切ってこんな疑問をぶつけてみたのです

エチオピアコーヒーの今 その5 コーヒーの品質とは_a0143042_15080525.jpg
その時、浅野さんの返事が「はい、確実に傷んでいると思います」だった

あの有名なイルガチャフィーと言っても実態は22もの農協の集合体なんです

その精製ステーションに集積するチェリーを収穫する小規模農家は2万人以上

フォレスト(原野)ガーデン(庭先)から集めた自生のコーヒーチェリーはザックリしたエリアごとに混ぜられ㎏たった20円位で買取られます

このような環境で完熟した良いコーヒーだけを厳選して大事に取扱うようなモチベーションはないと思います

出来るだけ短時間に多くの豆を集め㎏を稼ぐためには収穫も集積も粗末になるのは当たり前です

その後の乾燥精製も同じで作り手の顔が見えない、自分の仕事として評価されない作業に手間や情熱を注ぐことは残念ながら期待できません

エチオピアコーヒーの今 その5 コーヒーの品質とは_a0143042_15193714.jpg
浅野さんの務めるMETAD社が管理するグジはシダモ県にありイルガチャフィーの近く

そこにあるハンベラエリアにあるアラカでは厳選された品種だけを大事に収穫

更に丁寧に乾燥精製することで発酵臭の無い綺麗なコーヒーを作っています

ご来店時のサンプル依頼から数日後に届いた浅野さんのモカ、特にナチュラルをテイスティングした時、正直言って衝撃が走りました

花のような甘く芳香なフレーバー、爽やかな果汁のようなジューシーな酸味

その中には発酵、腐敗のような私の苦手な味も香りも全くありませんでした

完熟チェリーを新鮮なまま乾燥させ、そのままで食べられるレベルのドライフルーツに仕上げるような丁寧な仕事

SCAAカッピングで90点越えのトップオブトップを叩き出した完全シングルオリジン

それが浅野さんのモカの圧倒的な品質の秘密なんです

その6は、浅野さんが務めるMETAD社について






by coffeecolors | 2017-09-01 15:42 | 浅野さんのモカ


<< エチオピアコーヒーの今 その6...      エチオピアコーヒーの今 その4... >>